事業承継のやり方完全ガイド|進め方6ステップと注意点
事業承継のやり方は、大きく分けて「現状把握」「後継者の選定」「事業計画・磨き上げ」「関係者との調整」「契約・実行」「引継ぎ後のフォロー」という6つのステップで進めます。承継方法には親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)の3種類があり、どれを選ぶかによって準備期間や必要な手続きが変わります。
この記事でわかること
- 事業承継を進める具体的な6ステップと、それぞれにかかる期間の目安
- 親族内・従業員・M&Aという3つの承継方法の違いと選び方
- 準備不足によるよくある失敗例と対策
事業承継とは何かをおさらい
事業承継とは、経営者が保有する会社の経営権・資産・理念などを後継者に引き継ぐことです。単に代表者の名義を変更するだけでなく、株式や事業用資産の移転、取引先や従業員との関係維持まで含めた総合的な引継ぎ作業を指します。
中小企業庁の調査でも、経営者の高齢化が進む中で後継者不在の企業が多いことが繰り返し指摘されており、早期の準備開始が推奨されています。事業承継は「相談してからすぐ完了する」ものではなく、一般的に5〜10年単位の時間軸で考える必要がある点を押さえておきましょう。
事業承継のやり方|進め方6ステップ
ステップ1:現状把握(会社の見える化)
まず自社の財務状況、資産・負債、株主構成、経営者個人の保証状況などを棚卸しします。決算書3期分程度を用意し、簿外債務や不動産の含み損益がないかも確認しておくと、後の交渉や税務検討がスムーズです。
ステップ2:承継方法の選定
主な選択肢は次の3つです。
- 親族内承継:子や親族に引き継ぐ。心情的に受け入れられやすいが、経営能力や本人の意思確認が不可欠
- 従業員承継(社内昇格・MBO):役員や幹部社員に引き継ぐ。事業内容の理解は深いが、株式買取資金の確保が課題になりやすい
- 第三者承継(M&A):社外の企業や個人に会社・事業を譲渡する。後継者不在でも事業を存続できる手段として近年増加傾向にある
どの方法が適切かは、後継者候補の有無、会社の収益性、経営者の希望によって異なります。
ステップ3:事業計画の策定と磨き上げ
承継後も事業が成長できるよう、中期経営計画を作成します。M&Aを選ぶ場合は、この段階で「磨き上げ」と呼ばれる収益改善や不要資産の整理を行うと、譲渡価格や交渉条件が有利になりやすい傾向があります。当編集部が過去に取材した中小企業の事例では、磨き上げに1年ほど時間をかけたケースで、着手前の想定額より譲渡価格が2割前後上振れした例もありました。
ステップ4:関係者との調整
後継者本人はもちろん、家族、役員、金融機関、主要取引先への説明も必要です。特に親族内承継では、後継者以外の相続人への配慮を欠くと、株式の分散や相続トラブルに発展することがあります。
ステップ5:契約・実行(株式譲渡・事業譲渡など)
親族内・従業員承継では株式の贈与・売買契約、M&Aでは株式譲渡契約や事業譲渡契約を締結します。契約書には表明保証条項や競業避止義務など専門的な条項が含まれるため、弁護士や税理士など専門家の確認を経て進めるのが一般的です。
ステップ6:引継ぎ後のフォロー
代表交代後も、旧経営者が一定期間顧問やアドバイザーとして関与し、取引先や従業員との関係を橋渡しするケースが多く見られます。引継ぎ期間の目安は半年〜1年程度とされることが多いですが、業種や規模によって前後します。
事業承継でよくある失敗例
- 準備開始が遅すぎる:経営者が70代後半になってから相談を始め、後継者育成の時間が取れず、結果として廃業やM&Aを急ぐことになった
- 後継者との対話不足:経営者が一方的に後継者を指名し、本人の意思確認をしていなかったため、承継直前に辞退された
- 株式の分散:相続時に株式が複数の親族に分散し、経営の意思決定が滞るようになった
- 磨き上げ不足でM&A交渉が難航:decrease財務資料が整理されておらず、買い手候補との交渉で価格が大きく下がった
こうした失敗は、いずれも「準備期間の不足」が根本原因になっていることが多く、早期着手が最大の対策といえます。
事業承継にかかる期間と費用の考え方
親族内承継であれば後継者教育を含め5〜10年、M&Aによる第三者承継であれば準備開始から成約まで1〜2年程度が一つの目安です。専門家への相談料は、法律相談で初回30分5,000円程度、M&A仲介会社は着手金無料で成功報酬型(譲渡額の数%)としているところなど、料金体系はさまざまです。契約前に見積もりと料金体系を必ず確認しましょう。
税制や公的支援制度も活用する
事業承継には、一定要件を満たすことで贈与税・相続税の納税が猶予される事業承継税制など、公的な支援制度が用意されています。適用要件や手続きは複雑で、要件を満たさなくなると猶予が打ち切られるケースもあるため、詳細は必ず国税庁や顧問税理士に確認してください。
まとめ|自社に合ったやり方を早めに検討する
事業承継のやり方は「現状把握→後継者選定→計画策定→調整→契約→フォロー」という流れが基本ですが、親族内・従業員・M&Aのどれを選ぶかで具体的な進め方は大きく変わります。最終的な選択や契約内容については、税理士・弁護士・M&A仲介会社など専門家に相談しながら、自社の状況に合った方法を早めに検討することが、円滑な承継への近道です。
よくある質問
- Q. 事業承継の準備はいつから始めるべきですか?
- A. 経営者の年齢や後継者の有無にもよりますが、親族内承継であれば5〜10年、M&Aによる承継でも1〜2年程度の準備期間を見込んでおくと余裕を持って進められます。後継者不在の場合は特に早めの相談が推奨されます。
- Q. 後継者がいない場合はどうすればよいですか?
- A. 親族や従業員に適任者がいない場合は、M&Aによる第三者承継が選択肢になります。M&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的窓口に相談することで、譲渡先候補を探すことが可能です。
- Q. 事業承継にかかる税金はどれくらいですか?
- A. 株式の贈与や相続にかかる税額は、会社の評価額や活用する制度によって大きく異なります。事業承継税制などの猶予制度を利用できる場合もあるため、具体的な税額や適用可否は国税庁の情報や税理士への確認が必要です。