
個人事業主が株で節税する方法!新NISAや経費化の注意点を解説
個人事業主が株(株式投資)を購入しても、その購入費用を事業の「経費」にすることは原則としてできません。ただし、新NISA(少額投資非課税制度)などの非課税制度を賢く活用したり、青色申告の優遇措置と組み合わせたりすることで、個人全体の税負担を効果的に軽減することは可能です。
本記事では、個人事業主が株式投資を通じて合法的に節税するための仕組みや、確定申告時の注意点、よくある失敗例を具体的に解説します。
個人事業主の株取引と税金の基礎知識
個人事業主が株取引を行う際、まず理解しておくべきなのが「事業の経費にはならない」という点と「所得の区分」です。
株の購入費や損失は事業の経費にならない
個人事業主の本業が投資業(プロのデイトレーダーなどとして税務署に認められている場合)でない限り、株式の購入代金や投資による損失を、事業所得の経費として差し引くことはできません。株式投資は「個人資産の運用」とみなされるためです。
株式投資に関わる3つの所得と税率
株取引によって得られる利益には、主に以下の2種類があります。
1. 譲渡所得(売却益):株を売却して得た利益
2. 配当所得:企業から分配される配当金
これらは事業所得とは合算せず、他の所得と分けて税金を計算する「申告分離課税」が適用されます。税率は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%の一律です。事業所得のように、稼げば稼ぐほど税率が上がる累進課税(最大55%)とは異なる点を押さえておきましょう。
個人事業主が株で節税するための3つのアプローチ
個人事業主が株式投資を活用して手残りを増やすためには、以下の3つの制度・手法を理解することが重要です。
1. 新NISA(非課税制度)を最優先で活用する
2024年から始まった新NISAは、年間最大360万円(成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円)、生涯で1,800万円までの投資枠から得られる売却益や配当金が「永久に非課税」となる制度です。通常であれば約20%差し引かれる税金が0円になるため、個人事業主の資産形成において最も強力な節税手段となります。
2. 「特定口座(源泉徴収あり)」で確定申告の手間を省く
証券口座を開設する際、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択すると、証券会社が納税手続きを代行してくれます。この口座内で得た利益は自動的に課税されて完結するため、原則として確定申告の手間が発生しません。これにより、本業の確定申告書作成にかかる時間を削減できます。
3. 損益通算と繰越控除を利用する
複数の証券会社で取引をしており、片方の口座で利益が出て、もう片方の口座で損失が出た場合、「損益通算」を行うことで全体の税金を減らすことができます。また、その年に控除しきれなかった損失は、確定申告を行うことで最大3年間繰り越すことが可能です(繰越控除)。これらを利用する場合は、確定申告が必要になります。
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記事づくりを任せる →個人事業主が株取引で注意すべき3つの失敗例
良かれと思って行った株取引や確定申告が、かえって税負担を増やしてしまうケースがあります。代表的な失敗例を3つ紹介します。
失敗例1:特定口座の利益を確定申告して、国民健康保険料が跳ね上がった
「特定口座(源泉徴収あり)」での利益は確定申告不要ですが、損益通算などのためにあえて確定申告を選択することができます。しかし、確定申告をするとその利益が「総所得金額等」に算入されてしまいます。その結果、市町村が計算する国民健康保険料(税)の算定基礎額が増加し、翌年の保険料が大幅に上がってしまうという失敗が多発しています。申告する前に、保険料への影響をシミュレーションすることが不可欠です。
失敗例2:事業用の銀行口座や事業資金を使って株を購入した
事業用の口座から直接株式の購入資金を支出すると、帳簿上の「元入金」や「事業主貸」の処理が非常に煩雑になります。最悪の場合、税務調査時に事業資金の公私混同を指摘され、他の正当な経費まで厳しくチェックされる原因になりかねません。株取引を行う際は、必ず「個人用のプライベート口座」にお金を移してから入金・購入するルールを徹底しましょう。
失敗例3:配当控除を狙って総合課税を選び、かえって増税になった
配当所得は、分離課税ではなく「総合課税」として確定申告することで「配当控除」という税額控除を受けられます。課税される所得金額が一定以下(目安として課税所得695万円以下)であれば総合課税の方が有利になるケースが多いですが、これを超えると住民税率の上昇なども重なり、逆に税負担が増えることがあります。自身の課税所得金額を正確に把握した上で選択する必要があります。
株式投資を始めるための具体的ステップ
個人事業主がスムーズに株式投資による資産形成と節税を始めるための手順は以下の通りです。特に確定申告時期(1月〜3月)は口座開設の申請が平年の160%まで増加する傾向があるため、余裕を持った手続きを推奨します。
1. 個人用資金の確保:生活費や事業の運転資金とは別に、余剰資金を切り分ける。
2. 証券口座の開設:ネット証券などで口座開設を申し込む。その際、「新NISA口座」の開設と、課税口座は「特定口座(源泉徴収あり)」を同時に選択する。
3. 積立・購入設定:新NISAの「つみたて投資枠」などを活用し、毎月一定額を自動で積み立てる設定を行う(ドルコスト平均法によるリスク分散)。
4. 記録の保管:年間取引報告書などは電子交付でいつでも確認できるようにしておく。
税務上の判断や具体的な税額計算で迷った場合は、自己判断せず、必ず国税庁の公式ウェブサイトを参照するか、税理士などの専門家へ相談してください。
まとめ:制度を正しく理解して賢く資産形成を
個人事業主にとって、株取引の費用を直接の経費にすることはできませんが、新NISAの非課税枠をフルに活用することで、将来に向けた強力な節税対策となります。一方で、確定申告の選択方法を誤ると国民健康保険料が増加するなどの落とし穴もあるため、制度の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
また、個人事業主の防衛策としては、株だけでなく「小規模企業共済」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」など、掛金全額が所得控除になる制度を併用するのも非常に有効です。ご自身の事業状況に合わせて、最適なポートフォリオを構築していきましょう。
※あわせて読みたい:個人事業主におすすめの共済制度やiDeCoの活用法については、こちらの関連記事「個人事業主の節税対策まとめ!経費化と控除で賢く税金を減らす方法」もぜひ参考にしてください。
【2026年最新】制度改正と実践アドバイス
2024年から始まった新NISAは2026年時点でも非課税保有限度額1800万円の枠組みが継続しており、個人事業主にとって株式投資の利益を非課税化できる最重要ツールであることに変わりありません。ただし新NISA口座内の取引は損益通算や損失の繰越控除ができないため、事業所得が赤字の年に特定口座で損失を出しても節税効果は得られない点に改めて注意が必要です。また2026年分の確定申告からは電子申告(e-Tax)における証券会社の年間取引報告書の自動連携がさらに進んでおり、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でもマイナポータル連携で申告書へのデータ取込みが容易になっています。個人事業主が株式投資を経費化しようとするケースは依然として税務上グレーであり、事業用資金と投資資金の口座を明確に分離し、事業性が認められない限り経費計上は避けるべきです。節税目的であれば、小規模企業共済やiDeCoの掛金上限見直し(2026年以降の制度改正情報)と併用し、株式運用益の非課税枠と所得控除を組み合わせる戦略が引き続き有効です。
よくある質問
- Q. 個人事業主が株を買った場合、仕訳はどうすればいいですか?
- A. 事業用の口座から株の購入資金を支払った場合は、「事業主貸」の勘定科目を使って仕訳を行います。ただし、経理処理をシンプルに保ち税務上のリスクを避けるためにも、株の購入はプライベート用の個人口座から行うことを強くおすすめします。
- Q. 株の損失を事業所得の黒字と相殺(損益通算)することはできますか?
- A. できません。株式投資による損失は「譲渡所得」の区分となり、事業所得や給与所得などの他の所得区分と損益通算することは制度上認められていません。株の損失は、他の株の利益(譲渡所得・配当所得)とのみ通算が可能です。
- Q. 新NISAで得た利益は、確定申告の際に事業所得として報告する必要がありますか?
- A. いいえ、必要ありません。新NISA(少額投資非課税制度)口座内で得られた売却益や配当金は完全に非課税となるため、確定申告をする必要はなく、事業所得の申告書に記載する必要もありません。



